#星野源ください

夢の中へ連れていく

なつかしい味を

 

俺は今めちゃくちゃお腹が空いている。昼ご飯にも夜ご飯にも入らないこの時間、食うべきか食わぬべきか。

 

しかも食べたいものがピンポイントで決まっているのである。

最後に会ったのはいつか、連絡を取ったのはいつか。幼なじみのアイツの作る炒飯が無性に食べたい。

 

まだお互いの家の行き来が当たり前だった中学生の時、学校から帰って小腹が空いたときや休日のお昼によくご飯を作ってくれていた。

高校生になってからは行き来は少なくなったものの、お弁当を作ってくれたりしていた。

 

でも「彼女」ではなかったのよ。今思えば不思議だわ。

 

プロが作ったように美味い訳ではない。だが、馴染みの味というのは時に何にも変え難いものになる。

 

材料に何が入っているかはその時の彼女の気分、もしくは冷蔵庫の中身次第という大雑把な炒飯。チャーハンというより、文字通り炒め飯なのかもしれない。

 

久しぶりに連絡してみようかしら。どうしても食べたいのだ。今すぐじゃなくてもいい、ついでに会って顔を見て話をしたい。

 

そういえばいつか、あれは確か進路決定も近付いていたとき迷っている彼女に「俺のお嫁さんになるのどう?」なんて冗談めかしく言ったことがあった気がする。

 

「ばかじゃないの」と呆れながら笑って返されたのを思い出した。少し甘酸っぱい空気が流れた放課後の2人だけの教室。

 

彼氏はいるんだろうか。俺は今度アイツの飯を食べたら、今度こそ本当に胃袋をつかまれてプロポーズしてしまうかもしれない。