#星野源ください

夢の中へ連れていく

深夜のマドンナ

 

「250円になります。ちょうどお預かりします。レシートは、あっ、ありがとうございましたー」

 

深夜のコンビニアルバイトも慣れたものだ。高校も卒業したし、と 高い時給を目当てに始めたものの、最初は眠たくて立ったまま目を瞑ってフラフラしている時もあった。

 

そしてそのまま後ろに倒れたこともあった。とてつもなくかっこ悪いが、幸い店内には誰もいなかった。

 

深夜に来るお客さんはほとんどおじさんである。トラックの運転手だったり、工事現場帰りだったり、ヨレヨレのスーツを着て疲れきったサラリーマンだったり。

 

だからこそ他より記憶に残ってしまう、いつもチョコレートとなにかを買っていく彼女。

 

今日も来ている。ここ1ヶ月ほどはほとんど毎日来ているんじゃないだろうか。休みの日はどうかわからないが、それでも2時手前になると彼女は必ず現れる。

 

しかも可愛いのだ。

 

おじさんばかり見ているせいで女子という潤いを求めている俺の目には眩しすぎるほど可愛い。

 

「すいません、お願いします」

「あっ、すみません」

 

いつの間にか彼女がレジまで来ていた。

 

「合計で630円になります」

 

今日は雑誌買うんですねお嬢さん。ほう、ナチュラルな感じが好きなんですか。俺も結構好きです。

 

「おつりが70円ですね。いつもありがとうございます」

「えっ?」

「・・・あっ!」

 

しまった。いつも だなんて余計な一言を付け足してしまった。

 

「気付いてくれてたんですね」

「はい?」

「いえ。いつもお疲れさまです」

 

ああっ、笑顔が眩しすぎて直視できません! いけませんお客様!

 

「チョコレートよかったら食べてください。おやすみなさい!」

「は、あっありがとうございました〜?」

 

さっきレジを通したチョコレートを置いて、彼女は一目散に帰っていった。

 

女子から何かをもらったのはいつぶりだろうか。めちゃめちゃ嬉しいじゃないの。どうする俺、帰る?

 

とりあえずチョコレートをポケットに入れて、背筋を伸ばした。次のお客さんに向かって いつもより大きな声で「いらっしゃいませ!」とまるで居酒屋のような挨拶をしてしまったのは、俺らしいと思う。

 

f:id:MTMR_of_star:20170308222424j:image