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#星野源ください

夢の中へ連れていく

複雑な男心

 

「ちょっと、もうつぶれてるじゃないの」

「あ〜! やっと来たぁ! おっそい!」

 

目の前でジョッキ片手に怪しい呂律で、仕事が終わってから これでも急ぎ気味で来た俺を叱っているのは古い友人である。

 

「やってらんねぇよぉおお」

「ふは、声がでかいから」

 

どうやらゾッコンだった彼氏に振られたようで、今夜はヤケ酒だそうだ。こんな時にばかり俺は呼び出されている。

それはきっと俺が酒を飲まず、どれだけ酔っても手を出すこともなく安心安全に家まで送り届けてくれると確信しているからだと思う。

 

これまではそうしてきたが、俺だっていつ我慢の糸が切れるかわからないんだぞ! 男はみんな狼なのだと習わなかったのだろうか。それとも俺だから、と信じきってしまっているのだろうか。

 

「なんで、なんで」

 

酒を飲みながら、かと思えば机に突っ伏しながら涙をぼろぼろと零して「あんなに好きだったのに」だの「どこがいけなかったの」だの泣き言ばかり言っている。

 

「こらこら、俺の気持ちは?」

「なにいってるんだよぉ」

「んー、言わないけど」

 

どうせ今日のことも忘れるんでしょうが。・・・だったら言ってもいいのかしら。

 

今日も俺は手も出さず、チューすらせず家まで送り届けて自分の家に帰ってしまうんだろう。なんて情けない男なんだ。

 

「可愛いお顔が台無しですよ」

「いいもん、どうせ彼氏もいないもん」

 

本やドラマなら「俺がいるだろ」なんてセリフが出てくる場面だ。言う勇気は俺にはない。

なんて不毛な恋心なんだ。かれこれ何年もこの気持ちをしまい込んだまま。

 

まったく、俺はいつになったら勇気を振り絞れるのやら。

 

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